そこはかに香る甘い金木犀の香りに、今のすべてがある。優しいけど悲しい寂しい香りだ。
そう言えば、母が亡くなった年も、こんな感じだった。季節は春だったが、庭先にさく木蓮の白い大輪に、すべてが語られていた。
夜明けにはまだ間がある。風がなく何故か鳥の鳴き声も木蓮の葉が擦れる音もしない。不思議だ。いつもなら、表通りを走るクルマやバイクの音も聞こえるのに…
まるで異空間に取り残されたような感覚に、金木犀の甘い香りだけが、まるで私を誘うかのように漂う。
想いは果てしなく尽きることがない。その想いの意味を本質を知りたい。改めて生きる意味を問いたい。
すべてに感謝したい。