旅5 芸術の秋

芸術の秋の始まりである。久々に妻と、9月23日まで山梨県立美術館で開かれている特設展「増田 誠  パリー人生の哀歓」を見に行った。日差しは強かったが、真夏の勢いはない。エントランスから特設展の会場まで続く歩道を進んでいくと、きれいに剪定された庭木が目を引いた。もう少しすれば、枯葉舞う中を身を屈めポケットに手を突っ込んでこの道を歩くようになるのだろう。そんな晩秋の想いに浸りながら、会場に脚を運んだ。

増田 誠 は大正9年山梨県都留市谷村町で生まれ、戦後は釧路市に移り住み、その後昭和32年に単身でパリに渡り、同地で30年以上活躍した画家である。

特設展では大作が多く展示されていて、居ながらにしてパリの雰囲気を味わえ、ゆったりとした豊かな時間を過ごすことができた。当日は、増田晴美 夫人による記念講演が午後に予定されていたが、それはキャンセルして、ゆっくり会場を見て回った。作品を見終えてから、売店で記念絵はがきを買い、レストランで特設記念ランチを二人してゆっくり食した。簡単な肉料理とパンとサラダとコーヒーであったが、なぜか休日の美術館で食べたせいか、いつになく美味しく感じた。

然もない食事だが、パリの雰囲気を味わった後なので、そう感じたのだろう。人は想いの中に生きていることを改めて感じた。何の知識もなかったが、感動して一瞬涙がでそうになった絵は、《キャナル・サンマルタン》という水辺の街の風景絵であった。人の悲しみを映す出すパリの街の情景に思わず心が動いた。

人の一生は苦しみと悲哀に満ちている。求めつくしても得られぬ退廃的なムードが漂う男や女の顔に、私の想いが重なり合い、時空を超えるイメージの世界に遊ぶことができた。まるで親しい友と再会して語り合ったような楽しい一時であった。

人の一生は短い。大いに芸術に親しみ、先人の想いに遊ぶ秋にしようと思った。

 

 

 

jpjapon について

3匹の犬と優しいけど時々意地悪な元気なおばさんと桃やブドウに囲まれた田舎で暮らしています。音楽と写真が大好きなパソコンフリークです。日々の想いを、聖書の御言葉や御仏の教えを交えて仲間と語り合うのが大好きです。平凡な日常から垣間見る世間の出来事を、自分流に書き綴っていきたいと思います。
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