万物は神の意思によって創造された。それゆえ万物は一体である。その神によって、私達はこの地上のものを統治するために天空から遣わされたものである。それは、知恵の実を食べ天空の楽園を追われたアダムとイブに課せられた辛く厳しい仕事である。それゆえ、私達は戻れぬ天空の楽園に想いを馳せ、命をかけてこの地上に新たな楽園を建設してきたのである。
多くの犠牲と挫折を繰り返し失意の上に、天空の父にその救いを求めるも、追われし故郷への望郷の想いからである。それでも、私達は振るい立ち、天空の父から降り注ぐ霊力を借り故郷を模して打ち立てた国はこれまでに数知れない。全知全能を傾け、持てる力を振り絞り天空の謎を紐解き、それを模してみても、何一つ完全なるものを手にすることができないのである。如何なるものを持ってしても、不正や不義、偽善や悪徳や醜聞の芽を絶やすこともできずに、やっと手にした真理や善意や美徳や愛が、恰も何もなかったように儚く消え去ってしまうのである。
しかし、諦めてはいけない。天空の楽園は死後のものではない。神の国は見えないだけで、私達の心に存在する。私達は自ら創り上げた統治機構の一員であると同時に、万物が一体である神の国の構成員でもあるからである。それゆえ、自らが創り上げた誤った虚像に惑わされてはいけない。神の国の自分を見失ってはいけない。内なる自分の声に耳を傾け、万物一体の真理を求めなくてはいけないのである。
神の国はすぐそこに時空を超えて存在する。死後に存在するものではない。虐げられた民が来世に救いを求め善行を積んで行き着く処ではない。救いは今ここにある。その力をもって勇気をもって今を生き抜くことが、万物一体の神の栄光を現すことであり、天空の楽園に生きることなのである。
なぜなら、私達はエロスの愛に生きる身であっても、アガぺの愛に生きる存在であることを、誰もが当の昔に気づいているからである。神の国は時空を超えて、現世にも存在していることを忘れてはならないのである。