霞を食う

IMG_0334_20131227_183418仙人は霞を食べて生きると言う。文化芸術に生きる人間も同じようなもので、訳の分からぬ想いに凝り固まれば、熟れは日銭に糊口を凌ぐ身の上になってしまう。それでも何とか食べていければいいが、なぜそんな世界に尊い命をつなげようとするのか分からない。正に人間とは不可解な存在である。

まあ、そんな風にならぬまでも、極普通の人間でも時にはそんな想いに駆られることもあり、想いは果てしなく尽きることがない。聖書には「人はパンのみに生きるものではない、神の言葉によって生きる」と書かれているが、崇高で深遠な思想も学術研究や論文も、その多くは野獣の世界の産物であるにも拘わらず、何処かその偉業には神の御業を垣間見るような気がする。

ところで、改めて言うこともないが、野獣の世界の掟は弱肉強食である。一切の妥協もなく全ての命は勝者の手中にある。それは、私達の生きる世界でも同じことで、グローバル化に伴い市場原理主義が世界基準となる今日、貧富の格差は拡大の一途を辿り、貧困に喘ぐ地域では疫病で尊い子供たちの命が毎日奪われている。そんな現実を尻目に、世界の富は、物や金銭に限らず教育や文化などの資産も世界の富裕層に独占され、貧富の格差は益々拡大する一方、貧困層はまともな情報も得られないばかりか正業にも就けない状況が先進諸国でも起きている。そして、さらに深刻なのは、日々の想いを共にする家族や仲間さえ持ち得ない生活困窮者が増え世代間連鎖の様相を呈していることである。

戦後の復興期に比べれば、今日の日本の生活環境は比較にならぬほど豊かでありながら、貧富の格差は拡大する一方、市場原理主義に裏打ちされた超過密労働により、人心は疲れ切って未婚や離婚が増加の一途を辿る中、一向に少子化に歯止めが掛からない状況が続いている。

そんな少子化の原因をさらに深く探ってみると、一般的には労働環境の悪化や将来の生活不安などが挙げられるが、それよりも、グローバル化により日本人の生活心情や生活意識や物事に対する価値観が大きく変化したことが原因のように思える。

すべての事象が数値化され、世界基準である為替取引で推し量られる時代である。世界の人や産物が頻繁に行き交う時代に、もはや日本人特有の阿吽の呼吸や義理人情には頼れないことも至極当然のことであるが、今日の世相がグローバル化により拝金主義一辺倒に偏っていることに問題があるのではないだろうか。

なぜなら、私達の生活は私達の心や想いが創り為すもので、金銭だけではとても推し量れないものだからである。日々の生活とは、基本的には水や空気や太陽の光のように、誰にとっても平等なものであって、足らねば互いに分け合って充足すべきものなのである。そんな心の働きは、野獣の世界では通用しない論理であるが、少なくとも永久の世界に想いを馳せる霊長類の頂点に位する人間が持ちうる「誇り得る特性」ではないかと思うのである。

つまり、人間とは野獣と永久への想いが一つの身体に合体同居する生き物なのである。どちらの機能も生きるには必要不可欠な機能であって、そのバランスを適正に保つことは至難の業である。なぜなら、どちらを欠いても平穏無事に人生を送ることが難しいからである。まあ、毎日が食べて通れればいいのであるが、今日の世相は、明日へ不安が絶え間なく続き、個人の勤労意欲ではどうにもならない問題が多すぎるように思う。

そんな世相に反して、今やお金持さえあれば、世界の如何なる国でも長期滞在ビザが発行され、自由に世界の都市生活を満喫できる。今年はニューヨーク、2年後はパリ、ニュージーランドやオーストラリア、ヨーロッパの都市でさえ例外ではない。このようなグローバル市民と言われる富裕層を対象に、日本でも4〜5千万の資産を日本国内に保有していれば2年くらいの長期滞在を認める検討に入っているようだが、グローバル化によって、企業活動だけでなく個人の生活拠点も国の枠を超えたものになりつつあることには感慨深いものがある。なぜなら、国の枠を超えて自由に情報交換したり物品を購入できるようになったのはつい最近のことだからである。インターネットの普及は仮想空間に留まらない。ジョンレノンのイマジンにあるように、私達の生活心情や価値観は無意識の内に変化し、いつかは地球市民と言われるグローバル意識に統一されるのであろう。

しかし、今日いざ現実に海外生活をしようとすると、年金や医療や介護や保険など、それぞれの国で異なる社会制度が支障となりそう簡単にはいかない。まあ、環太平洋地域に限れば、TPPで何処まで規制を緩和撤廃するつもりなのか分からないが、お金さえあれば、益々有利に自由な優雅な生活が送れる一方、貧困層は世界中の富裕層の生活を下支えする階層に低迷すると言う「世界の潮流」は止められないと思う。

そんな世界の潮流に、少子高齢化・成熟社会の進むべき道を模索する日本は、アベノミクスによる景気浮揚策や成長戦略をベースに、世界から投資資金を呼び込み財政再建を目論み一方で、7年後のオリンピックに向け観光立国日本を目指している訳だが、そのキーワード「おもてなし」には単なるファーストフード店のマニュアル化されたサービスではなく、日本に来た外国人が日本を惚れ込むようなものであってほしいように思う。

つまり、願わくば、日本の文化や伝統に根ざす日本人の心情や価値観に世界中の人々が惚れ込み、世界基準に押し上げる契機になればいいと思うのである。なぜなら、今日の世相心情はアングロサクソン系の市場原理主義がベースとなっており、その思想の中に、私達日本人の生活心情や価値観が見て取れないからである。

世界の潮流グローバリズムは止められない。しかし、その世界を描いたイマジンの創作者ジョン・レノンの奥さんは日本人である。この二人の言動からも、世界の潮流であるグローバリズムと私達日本人の心根が相反するものでないことは分かる。なぜなら、男と女の関係は極めて生理的なものであって、生きるすべてを包含するものだからである。

そんな想いに、これからも世間を広くして、水や空気や光を分け合い霞を食べる生活を忘れずに頑張ろうと思う。

jpjapon について

3匹の犬と優しいけど時々意地悪な元気なおばさんと桃やブドウに囲まれた田舎で暮らしています。音楽と写真が大好きなパソコンフリークです。日々の想いを、聖書の御言葉や御仏の教えを交えて仲間と語り合うのが大好きです。平凡な日常から垣間見る世間の出来事を、自分流に書き綴っていきたいと思います。
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